この記事のポイント
- 年収倍率は物件価格(または借入額)÷年収で、何を何で割った数字かで値が変わります。
- 35年の例で借入額が年収の7倍なら、返済負担率は金利0.5%で21.8%、2.5%で30.0%です。
- 年収600万円・負担率25%・35年で逆算すると、借入額は金利により年収の5.8倍から8.0倍まで変わります。
- 倍率は入口の目安として使い、最終的には毎月の返済額と家計の数字で判断します。
年収倍率=物件価格(または借入額)÷年収
年収倍率は、住宅の価格が年収の何倍かを示す指標です。年収600万円の人が4,800万円の物件を買えば、年収倍率は8倍です。物件価格ではなく借入額で計算する場合もあり、頭金480万円を入れて4,320万円を借りるなら、借入額は年収の7.2倍です。
同じ「年収倍率」という言葉でも、物件価格で割るのか借入額で割るのか、本人の年収か世帯年収か、諸費用を含むかどうかで数字が変わります。ほかの資料の倍率と比べるときは、まず何を何で割った数字なのかを確認しましょう。
この例の4,320万円を、計算例として金利1.5%・35年の元利均等返済で借りると、毎月の返済額は132,272円で、年間返済額は年収600万円の26.5%です。倍率は返済負担率と結び付けて読むと、意味がはっきりします。
借入額が年収の何倍なら、返済負担率は何%になる?
借入額を年収の倍数で表すと、返済負担率は金利と期間でほぼ決まります。年収600万円で計算した例ですが、割合は年収が違ってもほぼ同じです。
| 借入額÷年収 | 金利0.5% | 金利1.5% | 金利2.5% |
|---|---|---|---|
| 5倍 | 15.6% | 18.4% | 21.4% |
| 6倍 | 18.7% | 22.0% | 25.7% |
| 7倍 | 21.8% | 25.7% | 30.0% |
| 8倍 | 24.9% | 29.4% | 34.3% |
| 10倍 | 31.2% | 36.7% | 42.9% |
同じ7倍でも、金利0.5%なら21.8%、2.5%なら30.0%です。倍率が同じでも金利が違えば、毎月の負担はまったく違います。金利が低いときに決めた倍率は、金利が上がると重い負担に変わる可能性がある点に注意してください。
返済期間でも、同じ倍率の重さは変わる
借入額が年収の7倍で、金利1.5%の場合、返済負担率は25年なら33.6%、35年なら25.7%、40年なら23.3%です。年収600万円なら借入額は4,200万円で、毎月の返済額は25年で167,974円、35年で128,598円、40年で116,413円、利息の合計はそれぞれ8,391,746円、12,010,587円、13,877,561円です。期間を延ばすと割合は下がりますが、利息の合計は増え、完済の時期も遅くなります。
倍率だけを見て「7倍なら大丈夫」「8倍は多すぎる」と判断すると、金利と期間の違いを見落とします。倍率を使うときは、少なくとも金利と期間をそろえたうえで、返済負担率に直して比べることが必要です。期間の違いによる総額の差は35年・40年・50年ローンの比較で計算しています。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| 条件 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 利息の合計 |
|---|---|---|---|
| 25年 | 167,974円 | 50,391,746円 | 8,391,746円 |
| 35年 | 128,598円 | 54,010,587円 | 12,010,587円 |
| 40年 | 116,413円 | 55,877,561円 | 13,877,561円 |
返済負担率から逆算すると、借入額は年収の何倍になる?
反対に、返済負担率を先に決めて借入額を逆算すると、倍率が出ます。年収600万円・返済負担率25%(月125,000円)・35年の場合、元金の目安は金利0.5%で48,153,714円(年収の8.03倍)、1.5%で40,825,066円(6.80倍)、2.5%で34,965,502円(5.83倍)です。
同じ25%でも、金利によって借りられる倍率は5.8倍から8.0倍まで変わります。ほかの人の倍率を目安にするより、自分の返済負担率と金利から逆算した倍率の方が、家計に合った数字になります。年収から借入額を考える手順は年収から住宅ローンの借入額を考えるで説明しています。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| 金利 | 元金の目安 | 総返済額 | 利息の合計 |
|---|---|---|---|
| 金利0.5% | 48,153,714円 | 52,499,769円 | 4,346,055円 |
| 金利1.5% | 40,825,066円 | 52,499,730円 | 11,674,664円 |
| 金利2.5% | 34,965,502円 | 52,499,653円 | 17,534,151円 |
調査の数字を読むときは、定義を確認する
住宅金融支援機構の住宅ローン利用者調査(2026年1月調査、2025年4月〜9月に借りた人が対象)では、融資率(融資額÷住宅価格)と返済負担率(年間返済額÷世帯年収)が示されています。融資率は「90%超~100%以下」が24.1%、返済負担率は「15%超~20%以内」が26.2%で、それぞれ最も多い区分です。
このページで参照している同調査の資料には、年収倍率そのものの集計は含まれていないため、ここでは平均的な倍率の数字は示しません。返済負担率は世帯年収で割った数字なので、本人の年収で計算する審査の割合とは定義が違います。調査の結果は、ほかの人がどう借りたかを示すもので、自分の家計に合う倍率を示すものではありません。過去の調査は同機構の調査一覧から確認できます。
年収倍率だけでは判断できないこと
- 金利と返済期間:同じ倍率でも、毎月の負担は大きく変わる
- ほかの借入れ:自動車ローンなどがあれば、住宅ローンに回せる額は減る
- 頭金と諸費用:物件価格の倍率と借入額の倍率は違う
- 住宅を持つと続く費用:管理費・修繕積立金・税金など
- 年収の中身:1人の収入か共働きの合計か、安定しているか
特に世帯年収で倍率を計算する場合は、2人の収入が続くことが前提になります。片方の収入が減ると、同じ借入額でも倍率と返済負担率は一気に上がります。たとえば世帯年収700万円で借入額が年収の7倍なら4,900万円ですが、収入が450万円に減れば約10.9倍に相当します。
全国銀行協会の解説も、借りられる金額と返すことができる金額は大きく異なる場合があるとし、教育資金や老後資金を含めた将来の収支を見積もる必要があるとしています。倍率は入口の目安として使い、最終的には毎月の返済額と家計の数字で判断しましょう。
物件価格の倍率から、必要な自己資金と借入額を考える
物件価格が年収の8倍(年収600万円で4,800万円)の場合、全額を借りると借入額も8倍で、金利1.5%・35年なら返済負担率は29.4%です。頭金を1割入れれば借入額は7.2倍になり、26.5%まで下がります。物件価格の倍率が同じでも、頭金の額で返済の重さは変わります。
さらに、住宅取得には諸費用がかかります。全国銀行協会の解説によると、諸費用は物件価格の5〜10%程度が一般的で、4,800万円の物件なら240万円〜480万円が目安です。同協会の別の解説は、無理のない借入額に自己資金を足したものが、購入できる物件価格(諸経費込み)になるとしています。物件価格の倍率を見るときは、頭金と諸費用を合わせた自己資金がいくら必要かも一緒に確認しましょう。
倍率を返済額に直して計算する
返済予算から元金を計算するツールの「年収から月々の金額を求める」に年収と返済負担率を入れると、元金の目安が表示されます。その元金を年収で割れば、自分の条件での借入額の倍率がわかります。
反対に、物件価格と頭金から借入額が決まっている場合は、金利上昇シミュレーションに借入額・期間・金利を入れて毎月の返済額を出し、12を掛けて年収で割ると返済負担率になります。いずれも審査や借入可能額を判定するものではありません。
参照した情報
本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。