この記事のポイント
- 自分が住むために借りた家を賃貸に出す前に、借入先の金融機関へ相談することが欠かせません。
- 家を貸しても返済額は変わらず、残高2,800万円・残り30年・1.2%なら毎月92,655円が続きます。
- 家族が住み続ければ控除を受けられる場合があり、家族ごと転居すると住まない年は受けられません。
- 計算例では、3年間家族ごと離れると受けられない控除は42万円です。
転勤で家を賃貸に出す前に、まず借入先へ相談する
住宅ローンは、どの住宅をどう使うためのお金かを前提に借りるものです。自分や家族が住むために借りた家を、転勤で住まなくなって第三者に貸すと、借りたときの資金の使い道と実際の使い方が変わることになるため、賃貸に出す前に借入先の金融機関へ相談することが欠かせません。
【フラット35】のご利用条件では、資金使途は申込み本人またはその親族が住む住宅の建設・購入資金とされ、第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得には利用できません。機構は融資住宅あてに転送不要郵便で融資額残高証明書を送ることなどにより、実際に住んでいるかを定期的に確認しており、投資用住宅としての利用などが判明した場合は、借入れの全額を一括して返済することになると案内しています。民間の住宅ローンの扱いは契約によって異なるので、契約書の条項を確認したうえで相談してください。
家を貸しても住宅ローンの返済は続く
家を貸して家賃収入が入っても、住宅ローンの返済額が変わるわけではありません。計算例として、残高2,800万円・残り30年・年1.2%(仮の値)なら、毎月の返済額は92,655円です。転勤先の家賃と合わせて、二重の住居費を払う期間が生じる可能性もあります。
家賃収入で返済をまかなう計画を立てる場合も、空室の期間や管理の費用、修繕などがあれば、手元に残る金額は家賃の額面より少なくなります。返済は家賃収入の有無にかかわらず毎月続くため、家賃が入らない月にも返済できるかを確かめておきます。転勤先での家計の予算は返済予算からの逆算のように毎月の金額から考えると整理しやすくなります。
住宅ローン控除:家族が住み続けるなら控除を受けられる場合がある
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅の取得等から6か月以内に住み始め、控除を受ける年の12月31日まで引き続き住んでいることが要件の一つです。国税庁のNo.1234によると、転勤などのやむを得ない事情で本人が家を離れる場合でも、配偶者や扶養親族など生計を一にする親族がその家に住み続け、事情が解消した後は本人も一緒に住むと認められるときは、本人が引き続き住んでいるものとして控除を受けられます。
単身赴任で家族が家に残る場合がこれにあたります。平成28年4月1日以後に住宅の取得等をした場合は、転勤先が国外でも、生計を一にする親族が年末まで住み続けていれば、この取扱いを受けられるとされています(総合課税の対象となる国内源泉所得がある年分に限られます)。
家族ごと転居したら控除は止まり、戻れば再適用の可能性
家族と一緒に家を離れた場合、住まなくなった年以降は控除を受けられません。ただし、国税庁のNo.1234では、勤務先からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由があり、家を離れる日までに一定の手続を行っていることなどの要件を満たせば、再びその家に住んだ年以後、残りの控除期間について控除の再適用を受けられるとされています。
再び住んだ年にその家を賃貸に出していた場合は、その翌年からの再適用になります。また、控除期間は延長されないため、再適用を受けられるのは残りの控除期間がある場合に限られます。家を離れていた年の分は、後から取り戻すことはできません。控除期間の残りが少ない時期に長く家を離れると、戻ったときには控除期間が終わっていることもあります。
計算例:控除を受けられない年があると、いくら減る?
計算例として、新築の省エネ基準適合住宅に2026年4月に入居し、借入額3,000万円・35年・年1.0%(仮の値)、特例対象個人には当たらない場合を本サイトの住宅ローン控除の計算で試算します。この条件では控除期間13年、各年の控除限度額は14万円で、年末残高×0.7%が限度額を上回るため、毎年14万円、13年間で182万円になります(所得税額などによる上限は考えていません)。
| 年 | 年末残高 | 控除額 | 家族ごと転居した場合 |
|---|---|---|---|
| 2028年 | 28,065,153円 | 140,000円 | 控除を受ける |
| 2029年 | 27,326,186円 | 140,000円 | 受けられない |
| 2030年 | 26,579,793円 | 140,000円 | 受けられない |
| 2031年 | 25,825,904円 | 140,000円 | 受けられない |
| 2032年 | 25,064,442円 | 140,000円 | 戻った年に賃貸していれば受けられない |
2029年から3年間家族ごと離れれば、受けられない控除は42万円です。戻った2032年にその家を貸していた期間があれば、その年も対象外となり56万円になります。
35年・年1.0%、特例対象個人に当たらない場合。家を離れた年は控除を受けられません。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| 年 | 年末残高 | 控除額 |
|---|---|---|
| 2026年 | 29,521,112円 | 140,000円 |
| 2027年 | 28,796,770円 | 140,000円 |
| 2028年 | 28,065,153円 | 140,000円 |
| 2029年 | 27,326,186円 | 140,000円 |
| 2030年 | 26,579,793円 | 140,000円 |
| 2031年 | 25,825,904円 | 140,000円 |
| 2032年 | 25,064,442円 | 140,000円 |
| 2033年 | 24,295,329円 | 140,000円 |
| 2034年 | 23,518,492円 | 140,000円 |
| 2035年 | 22,733,849円 | 140,000円 |
| 2036年 | 21,941,324円 | 140,000円 |
| 2037年 | 21,140,838円 | 140,000円 |
| 2038年 | 20,332,309円 | 140,000円 |
家を離れる前と、戻った後の手続き
再適用を受けるためには、家を離れる日までに、その家の所在地の所轄税務署長に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を提出し、税務署長から交付を受けている場合は未使用分の年末調整用の控除証明書兼申告書も提出します。
再び住んだ年以後、再適用を受ける最初の年分は、確定申告書に住宅借入金等特別控除額の計算明細書と、借入金の年末残高等証明書を添付して提出します。転勤が決まったら、引越しの準備と並行して、税務署への届出を忘れないよう予定に入れておくことが大切です。控除の仕組みは住宅ローン控除の計算方法で解説しています。
確認の順番:借入先、税務署、家族の住まい
- 借入先の金融機関に、転勤と住まいの予定を伝え、賃貸に出すことが契約上できるかを確認する
- 家族が住み続けるか、家族ごと転居するかを決め、控除の扱いがどうなるかを国税庁の案内で確認する
- 家族ごと転居する場合は、離れる日までに税務署へ届出をする
- 賃貸に出す場合は、家賃収入が入らない月も返済できるかを家計で確かめる
税の取扱いは個別の事情で変わることがあるため、判断に迷う場合は税務署に相談してください。
転勤の期間がはっきりしない場合でも、戻る可能性があるなら、家を離れる前の届出だけは済ませておくと、後で再適用を受けられる余地を残せます。
返済額と控除額を試算して、離れる期間の影響を確かめる
住宅ローン控除の計算に借入額・返済期間・金利・住宅の区分・入居年を入れると、年ごとの年末残高と控除額が表示されます。家を離れる予定の年の控除額を合計すれば、受けられなくなる金額の目安が分かります。返済額そのものは金利上昇シミュレーションで、残高・残り期間・金利を入れて確認してください。
参照した情報
- 住宅金融支援機構:【フラット35】ご利用条件
- 国税庁:No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等
- 国税庁:No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。