この記事のポイント
- 適用金利は「基準金利-優遇幅」で決まり、優遇幅は原則として借入後に変更できません。
- 3,000万円・35年の例では、当初10年が0.2ポイント低い型のほうが総額で635,972円多くなりました。
- 当初期間が5年と短い場合、全期間引下げとの総額の差は1,410,166円に広がります。
- 基準金利が上がっても両方の型が同じ幅で上がるため、優遇幅の差は総額に効き続けます。
優遇幅(引下げ幅)とは:基準金利から差し引かれる金利の幅
三菱UFJ銀行の解説では、住宅ローンの金利を「基準金利-優遇幅=適用金利」という関係で説明し、基準金利を定価、優遇幅を割引額、適用金利を割引後の価格にたとえています。優遇幅は金融機関ごとに異なるほか、申込内容や取引条件によっても変わります。
優遇幅の型は、返済期間を通じて一定の幅が続く「通期優遇型」と、借入当初の一定期間だけ大きな幅が適用される「当初期間優遇型」の2つに分けられます。計算例(3,000万円・35年)では、当初10年の金利が0.2ポイント低い型のほうが、35年間の総額では635,972円多くなりました。最初の金利の低さだけで比べると、総額の違いを見落とすことがあります。
通期優遇型と当初期間優遇型の違い
同じ解説をもとに、2つの型の特徴を整理します。
- 通期優遇型:返済期間を通じて同じ優遇幅が適用されます。多くの場合、借入当初に変動金利を選んだときに適用され、変動金利から固定金利へ変更しても優遇幅は変わらないと説明されています。
- 当初期間優遇型:借入当初の一定期間に、より大きな優遇幅が適用されます。多くの場合、借入当初に固定金利を選んだときに適用され、当初の固定期間が終わると優遇幅が縮小します。
どちらの型でも、優遇幅は契約時に決まり、原則として借入後に変更することはできないとされています。つまり、借りる時点で、当初期間が終わったあとの優遇幅まで確認しておくことが大切です。適用金利の読み方は基準金利と適用金利の解説でも説明しています。
計算例:全期間1.8ポイント引下げと、当初10年2.0ポイント引下げ
計算例として、3,000万円を35年(420回)で借ります。説明を簡単にするため、基準金利は全期間2.5%で変わらないと仮定します(実際には変動金利と固定金利で基準金利が異なり、基準金利そのものも見直されます)。数字はすべて説明用です。
- A:通期で1.8ポイント引下げ…適用金利は35年間0.7%
- B:当初10年は2.0ポイント、11年目以降は1.4ポイント引下げ…適用金利は当初10年0.5%、その後1.1%
| 項目 | A:通期1.8ポイント | B:当初10年2.0→1.4ポイント |
|---|---|---|
| 1〜10年目の毎月返済額 | 80,557円 | 77,876円 |
| 11年目以降の毎月返済額 | 80,557円 | 83,749円 |
| 利息の合計 | 3,833,338円 | 4,469,310円 |
| 35年間の総返済額 | 33,833,338円 | 34,469,310円 |
当初の10年で得をしても、その後の25年で逆転する
最初の10年間だけを見ると、Bの返済額の合計は9,345,120円で、Aの9,666,840円より321,720円少なくなります。毎月2,681円の差です。ところが11年目からはBの金利が1.1%に上がり、毎月の返済額はAより3,192円多くなります。この差が25年間続くため、35年間の総額ではBが635,972円多くなりました。
当初の引下げが大きい型は、早い時期の家計を楽にする効果があります。一方で、総額で比べるとこの例のように逆転することがあります。どちらを重く見るかは、当初10年の家計の事情と、それ以降の見通しによって変わります。差の大きさは、当初の引下げ幅と終了後の引下げ幅の差、そして当初期間の長さで決まります。
- A:通期0.7%
- B:当初10年0.5%→1.1%
3,000万円・35年、基準金利2.5%一定と仮定。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| A:通期0.7% | B:当初10年0.5%→1.1% | |
|---|---|---|
| 1年目 | 80,557円 | 77,876円 |
| 5年目 | 80,557円 | 77,876円 |
| 10年目 | 80,557円 | 77,876円 |
| 15年目 | 80,557円 | 83,749円 |
| 20年目 | 80,557円 | 83,749円 |
| 25年目 | 80,557円 | 83,749円 |
| 30年目 | 80,557円 | 83,749円 |
| 35年目 | 80,557円 | 83,749円 |
| 総返済額 | 33,833,338円 | 34,469,310円 |
当初期間が短いと、差はさらに広がる
同じBの条件で、当初期間が10年ではなく5年だった場合を計算すると、6年目からの毎月の返済額は84,920円、35年間の総返済額は35,243,504円です。当初10年の場合より774,194円多く、Aと比べると1,410,166円の差になります。
当初期間が短いほど、低い金利の恩恵を受ける期間が短く、縮小後の優遇幅で返す期間が長くなるためです。当初期間優遇型を検討するときは、「当初の金利」「当初期間の長さ」「期間終了後の優遇幅」の3つをそろえて比べてください。固定期間が終わったあとの選び直しについては固定期間選択型の解説で計算しています。
- A:通期0.7%
- B:当初5年0.5%→1.1%
3,000万円・35年、基準金利2.5%一定と仮定。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| A:通期0.7% | B:当初5年0.5%→1.1% | |
|---|---|---|
| 1年目 | 80,557円 | 77,876円 |
| 5年目 | 80,557円 | 77,876円 |
| 10年目 | 80,557円 | 84,920円 |
| 15年目 | 80,557円 | 84,920円 |
| 20年目 | 80,557円 | 84,920円 |
| 25年目 | 80,557円 | 84,920円 |
| 30年目 | 80,557円 | 84,920円 |
| 35年目 | 80,557円 | 84,920円 |
| 総返済額 | 33,833,338円 | 35,243,504円 |
基準金利が上がった場合は、どちらも同じ幅で上がる
優遇幅は差し引く幅なので、基準金利が上がれば、どちらの型でも適用金利は同じ幅だけ上がります。仮に11年目から基準金利が0.5ポイント上がって3.0%になったとすると、Aの適用金利は1.2%、Bは1.6%です。11年目以降の毎月の返済額はAが85,554円、Bが88,850円、35年間の総額はAが35,332,599円、Bが35,999,872円となり、差の構図は変わりません。
つまり、優遇幅の違いは基準金利の動きとは別に、ずっと総額に効き続けます。複数の金融機関を比べるときは、基準金利の水準だけでなく、優遇幅がいつまで、どれだけ続くかを書面で確認することが大切です。金利差が小さく見えても総額では差が出ることは、金利0.1%の差の早見でも確かめられます。
優遇幅は後から変えられない:確認と見直しの方法
三菱UFJ銀行の解説によると、優遇幅は契約時に決まり、原則として借入後に変更できません。優遇幅を変えたい場合は、借り換えによって新しい金融機関の適用金利や優遇幅を適用する方法があるとしたうえで、借り換えには手数料などの諸費用がかかるため、諸費用も含めて確認することが大切だと述べています。
返済中の方は、まず契約書で自分の優遇幅が通期か当初期間だけかを確認し、当初期間だけなら終了時期と終了後の幅をメモしておきましょう。借り換えを考える場合は、借り換えシミュレーションで諸費用を含めた総額を比べられます。
自分の優遇条件で返済額を試算する
当初期間が終わったあとの返済額は、金利上昇シミュレーションで計算できます。当初期間が終わる時点のローン残高(返済予定表の該当回)と残りの返済期間を入れ、「現在の金利」に当初期間中の適用金利、「比べたい金利」に終了後の適用金利(基準金利-終了後の優遇幅)を入れてください。毎月の増加額と、残り期間の総額の差が分かります。
計算の金利は契約書の数字を使い、広告の金利や他人の契約の数字で代用しないようにしてください。これから借りる場合は、当初期間中と終了後の2つの適用金利を金融機関に確認し、両方で返済額を計算してから比べると、上の例のような逆転を見落としにくくなります。結果は特定の金融機関や商品を勧めるものではありません。
参照した情報
本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。