繰上返済

繰上返済と投資・貯蓄はどっち?借入金利と手元資金で考える

繰上返済で減る利息を「借入金利で確定する節約」として計算し、同じお金を貯蓄や運用に回す場合との比べ方、手元資金を残す理由、住宅ローン控除との関係を数字で整理します。

この記事のポイント

  • 繰上返済で減る利息は、借入金利が続く限り確定した節約で、運用の成果は確定していない
  • 残高2,500万円・残り25年・1.0%で300万円を期間短縮型で繰り上げると、利息789,079円減
  • 期間短縮型の節約は、同じお金を借入金利と同じ年利で運用した増加額に近い水準になる
  • 繰り上げたお金は戻らないため、手元に残す生活資金を先に決めておく

比べるのは「借入金利で確定する節約」と「不確かな運用の手取り」

繰上返済と、同じお金を貯蓄や投資に回すことのどちらが自分に合うかは、一つの答えがありません。ただ、比べ方ははっきりしています。繰上返済で減る利息は、借入金利がそのまま続く限り確定した節約です。一方、運用の成果は手数料や税金を差し引いた手取りで考える必要があり、将来の結果は確定していません。

計算例として、残高2,500万円・残り25年のローンで300万円を期間短縮型で繰り上げると、年1.0%が続く場合の減る利息は789,079円、返済期間は40か月短くなります。この789,079円は、300万円を毎年1%で25年間複利で増やした場合の増加額847,296円と近い大きさです。繰上返済は「借入金利とほぼ同じ利回りを、価格変動なしで受け取る」のに近い性質を持つ、と考えると比べやすくなります。

2,500万円・残り25年・1.0%で300万円を繰上返済
  1. 繰上返済なし327万円
  2. 期間短縮型248万円
  3. 返済額軽減型287万円

元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。

グラフの数値を表で見る
2,500万円・残り25年・1.0%で300万円を繰上返済
方法利息の合計毎月の返済額返済期間
繰上返済なし3,265,241円94,219円25年
期間短縮型2,476,162円94,219円21年8か月
返済額軽減型2,873,406円82,912円25年

金利水準別に見る:繰上返済の効果と複利の増え方

同じ条件で金利を変え、繰上返済で減る利息と、300万円を一定の年利で25年間複利で増やした場合の増加額(税金・手数料を考えない単純計算)を並べました。運用の欄は将来の利回りの予想ではなく、比較のための算数です。

残高2,500万円・残り25年で300万円を繰り上げた場合
借入金利(仮定)期間短縮型:減る利息短くなる期間返済額軽減型:減る利息300万円を同じ年利で25年複利運用した増加額
0.5%373,162円38か月192,028円398,387円
1.0%789,079円40か月391,835円847,296円
2.0%1,765,212円44か月814,664円1,921,818円

二つの列は時間の流れ方が違うため厳密に同じ物差しではありませんが、期間短縮型の節約は「借入金利と同じ年利で運用した結果」に近い水準になっています。運用を選ぶ場合は、手数料や税金を差し引いた後の手取りの利回りが借入金利をどの程度上回る見込みがあるのか、そして下回ったり元本が減ったりする可能性をどこまで受け入れられるのかを考えることになります。

2,500万円・残り25年・2.0%で300万円を繰上返済
  1. 繰上返済なし679万円
  2. 期間短縮型502万円
  3. 返済額軽減型597万円

元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。

グラフの数値を表で見る
2,500万円・残り25年・2.0%で300万円を繰上返済
方法利息の合計毎月の返済額返済期間
繰上返済なし6,788,847円105,964円25年
期間短縮型5,023,635円105,964円21年4か月
返済額軽減型5,974,183円93,248円25年

返済額軽減型なら毎月の家計にどう効くか

同じ300万円を返済額軽減型で繰り上げた場合、残り25年のまま毎月の返済額が下がります。上の条件では、年0.5%なら月10,640円、年1.0%なら月11,307円、年2.0%なら月12,716円の減少でした。減る利息は期間短縮型の約半分ですが、毎月の支出が今から下がるため、浮いた分を毎月の積立に回すといった使い方も考えられます。

ただし、浮いた月々の金額を実際に貯蓄や運用に回さず生活費に使ってしまうと、計算上の比較は成り立ちません。繰上返済か運用かを比べるときは、「繰り上げなかったお金」と「繰り上げて浮いた毎月の金額」が、それぞれ実際にどこへ行くのかまで決めておくと、比較が現実に近づきます。

繰り上げたお金は戻らない:手元資金を残す理由

繰上返済したお金は元金の返済に充てられるため、後から必要になっても引き出せません。全国銀行協会は、収入の増加や臨時収入などで余裕資金ができたときに繰上返済が有効だと説明しています。逆に言えば、生活に必要な資金まで繰上返済に充てると、急な出費のときに別の借入れが必要になりかねません。

手元に残す額に決まった基準はありませんが、たとえば年1.0%・残高2,500万円・25年の毎月返済額は94,219円で、その6か月分は565,314円です。返済額の何か月分を確保したいか、家族の状況や収入の安定性から自分で決めておくと、繰上返済に回せる上限がはっきりします。全国銀行協会のFP回答でも、借り換えの諸費用で貯蓄が大きく減ったり教育費を取り崩したりすると、かえって家計のリスクになると指摘されています。繰上返済でも同じ考え方が当てはまります。

住宅ローン控除を受けている期間の考え方

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末残高等に0.7%を掛けた額と控除限度額の小さい方を所得税から差し引く仕組みです(国税庁、令和8年4月1日現在法令等)。年末残高×0.7%が限度額を下回っている場合、繰上返済で残高が減ると控除額も減ります。

そのため、控除期間中の繰上返済では「減る利息」から「減る控除額」を差し引いて効果を見る必要があります。実際に控除の効果を受けられる額は所得税額などにも左右されます。具体的な計算例は繰上返済と住宅ローン控除で示しています。控除額の目安は住宅ローン控除シミュレーションで確認できます。

全額か、一部か:分けて考える選択肢

「繰上返済か、運用・貯蓄か」を二者択一にする必要はありません。同じ条件(残高2,500万円・残り25年・年1.0%)で100万円だけを期間短縮型で繰り上げると、減る利息は277,174円、短くなる期間は13か月です。300万円のときの789,079円・40か月と比べると、効果はおおむね金額に比例しています。

手元資金として残す額、近い将来の支出に備える額、繰上返済に回す額を分けて考えると、どちらか一方に偏らずに済みます。繰り上げる時期を後ろにずらすと効果が小さくなる点は繰上返済の時期による違いで計算しています。

判断の前に書き出しておきたいこと

  • 適用金利と金利タイプ:変動金利なら、将来金利が上がると繰上返済の効果は大きくなり、下がると小さくなります。本サイトの計算は金利一定の前提です。
  • 繰上返済の手数料と最低金額:契約ごとに違います。手数料は効果から差し引きます。
  • 手元に残す生活資金:毎月返済額の何か月分、または金額で決めておきます。
  • 数年以内の大きな支出:教育費、車、住宅の修繕など。全国銀行協会は教育費の負担増が予想される場合に返済額軽減型も検討するよう案内しています。
  • 運用する場合の手取り利回りと値下がりの可能性:手数料・税金を引いた後で考えます。
  • 住宅ローン控除の残り年数:控除の減少分を差し引くかどうかが変わります。

本サイトは、どちらが有利かを判定したり、特定の運用商品を勧めたりするものではありません。数字を並べて、自分の優先順位を確かめるための材料です。

自分の数字で繰上返済の効果を出しておく

まず繰上返済シミュレーションに、残高・残りの返済回数・適用金利・繰り上げを考えている金額・手数料を入力し、期間短縮型と返済額軽減型で減る利息を確認してください。その金額が、同じお金を手元に置いた場合に得られそうな手取りと比べてどうか、そして手元資金が十分残るかを並べて考えます。金利が上がった場合に毎月の返済がどう変わるかは金利上昇シミュレーションで確かめられます。

参照した情報

本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。